写真 Photo

いま港にあるものや人を写真で遺す。今回は大きく2つの視点から撮影と制作を行っています。1つは目の前のものを真っ直ぐに見つめる視点。築地神社にまつわる撮影では宮司の大原良彦氏を、地蔵盆まつりに関しては、まつりに特化せず、港の踊り文化を支えてこられた師範の豊淑道(渡邊江美)氏の肖像写真を撮影し、最も保存性が高いと言われているプラチナ・パラジウムプリントで仕上げています。いまの港を支えてきた人を記録し、且つ後世まで遺す試みです。2つ目の視点では、普段見過ごしてしまうような景観を取り上げています。築地神社境内にある杜と神社創建当初から残る倉庫が主ですが、変わらずそこにあるもの、かつての人たちも眺めていたであろう光景を思いながら撮影を行いました。見えているけれど、見えない。だからこそ、私たちの想像を掻き立て、港と個が持ち得る記憶とを写真が繋げてくれる気がするのです。

地蔵盆まつり_2、築地神社_2:ピグメント・プリント / カラー / 600mm×800mm / 2015
地蔵盆まつり_1、築地神社_1、3 - 6、8 - 10、12: ピグメント・プリント / カラー / 300mm×400mm / 2015
築地神社_9:ピグメント・プリント / カラー / 900mm×1,200mm / 2015
大原 良彦氏, 築地神社 宮司:プラチナ・パラジウムプリント / 102mm× 136mm / 2015
築地神社_7 銀杏:プラチナ・パラジウムプリント / 87mm× 116mm / 2015
築地神社_11 銀杏:プラチナ・パラジウムプリント /102mm× 136mm / 2015
豊淑道(渡邊 江美)氏, 師範:プラチナ・パラジウムプリント / 87mm× 116mm / 2015

音 Sound

「みなとサウンドアーカイヴ2015 “みなとハーモニー”」と題したこの作品は、2015年7月から11月までの港区の”今”を録音した、約36分の音響作品です。
場所があり、人が住み、そして街ができる。この当たり前の出来事が、港区では、まるで音楽的なハーモニーのように営まれ、街の響きとなって聴こえてきます。そのハーモニーから”みなと祭り” “地蔵盆祭り” “日常” の3つのモチーフを取りあげ、音楽のように構成しました。この作品が2015年の港区の記録として、後世の人々が街の様子を知る機会となる事を願います。

「みなとサウンドアーカイヴ2015 “みなとハーモニー”」24bit / 48KHz(Original : 24bit / 96Khz)/ 36’23” / 2015

「みなとサウンドアーカイヴ2015 “みなとハーモニー”」サウンドスコア

映像 Movie

いまの港の姿をありのまま記録するのではなく、少しだけフィクショナルな視点を持ち込むことで単なる記録にとどまらないありかたを意識しました。
「にゅう☆ZIZOBON 2015」は、地蔵盆まつりの1日を撮影したものから選んだシーンの一部分を繰り返すことで、いわゆる”記録”ではないものを制作しようと試みました。短く反復されることによって強調された動きは、まつりの準備の様子も含めどこか新たな”踊り”にみえてきます。
「たまたび −築地神社2015−」では、以前に築地神社で行われていた行事についてまちの人にお話を伺いました。随分とまえの話なのでそれぞれの人の記憶は少しずつ異なりどこか曖昧ですが、そのことが面白く”その曖昧さ”を記録することにしました。そんな曖昧さと風船は相性が良いように思います。
技術的には現行テレビ放送の4倍の情報量を持つ4K映像で撮影することで、技術変化の激しい映像の世界で少しでも長く有効であることを目指します。

「にゅう☆ZIZOBON 2015」4K(HD上映) /4’30” /2015

「たまたび −築地神社2015−」4K /13’33” /2015